今回は「自律型人材の育成」について議論したグループに注目しました。議論は「メンバーの自律を阻害しているのは過去の成功体験をもとに前例踏襲を強いてきたミドルの責任なのでは?」というミドル自身の役割の自己否定からスタートしました。議論の中では、比較的市場が安定し先を見通すことができた時代では指示命令・管理監督を中心とした守りのマネジメントで組織をまわすことができていたが、不確実性の高い現在では、もはやミドル自身も答え(最適解)が分からず正しい指示命令も指導もできない、という現状が挙げられました。ミドル自身が正解が分からない以上、ミドルは速やかにその権限・権力を手放し、問題解決や価値創造のためにメンバーが持つ様々な知見や経験を活かすべく、メンバーの自律性を育むことが重要なマネジメント課題である、という認識で一致しました。加えて、在宅勤務の定着化やフリーアドレスによって、もはや従来のようなきめ細やかな管理業務そのものもできない(=メンバーの自律性に委ねるしかない)という窮状も報告されました。管理者としてのミドルの役割を自ら否定しその権限を手放すことはミドルにとってとても勇気のいる営みのはずですが、これからのミドルマネジメントの役割は「自律型の人材を組織化し機能させること」であると自ら再定義したことで、守り(管理)から攻め(変革)のマネジメント課題を見出して頂けたと考えます。この課題提起は他グループのメンバーからも共感と共振をもって受け止められたと同時に、ミドル自身の存在意義を問い直すテーゼとなりました。議論の中では、自律的なメンバーが育った結果、「ミドルが楽をできる組織を目指す」と表現されましたが、それはミドルの参謀となるようなメンバーを多くを育て、ミドル自身はより上位層を動かすアクチュエーターとして機能することで従来とは異なる存在意義を確立するという主旨の提案でした。