今回の討議において特に注目したのは「相互尊重」というワードでした。これは「お互いを尊重したコミュニケーションによって、チーム全員が当事者意識を持ってリードする組織への変革」をゴールイメージに議論したグループの中で挙げられたワードですが、その背景には「上意下達によるコミュニケーションに加えて、最適解をチーム全員で模索する必要がある」という従来からのチーム運営や意思決定のプロセスに関しての問題意識があったようでした。リモートワークも定着しミドルが全てを管理すること(マイクロマネジメント)が難しい中で、メンバーに耳を傾け、動機づけをし、時に権限を委譲して意思決定をメンバーに委ねていく必要があることは、討議における共通理解でした。その前提から、ミドルがチームの中心から外れた自律型組織あるいは多元型組織(中心が多くある組織、全員がリーダーシップを発揮しうる組織)への変革を描く討議が進められました。
討議では、ミドルが権限を手放し、トップダウンによる意思決定からメンバーの総意に基づく意思決定のプロセスを模索しようとする際、ミドルに求められるスタンスは、率先垂範・上意下達のリーダーシップではなく、メンバーへ奉仕する姿勢(サーバントリーダー)であるという意見も聞かれました。一方で「言うは易く行うは難し」であり、ミドルが手にした権限を放棄し、一定の統制力をあきらめることは勇気と決断がいるはずです。そこで問われるのが「相互尊重」という基本スタンスであるように感じます。それは寛容であり、他者を理解し、思いやる気高さや真摯さ(ノブレス・オブリージュ)を語る内容でした。自己中心的な欲求や成功の追求よりも大切な「相互尊重」という基本スタンスによって立つリーダーシップを磨く・育むことはミドルが自らを厳しく律することであり、時間と労力を要する自己開発でもあるように感じた次第です。この旨はメッセージとして当日もお伝えし、ミドルとして組織を変革していくことは、同時にミドル自身が自己変革を図ることでもあることをご理解頂いたものと考えます。